FSSC22000認証の追加要求事項が2024年4月の監査より、Ver.6に移行します。
アレルゲンに関する変更点と組織での対応についてDNVビジネス・アシュアランス・ ジャパン株式会社の長谷川清様にお話を伺いました。
目次
Ver6変更の概要について教えてください。
FSSC22000などのGFSI(グローバル・フード・セーフティー・イニシアチブ)承認食品安全スキームはGFSIが定めたベンチマーク要求事項に従って改定されます。
FSSC22000はISO22000+産業分野毎の技術仕様+FSSC22000追加要求事項の3つの規格で成り立っています。
今回のFSSC22000追加要求事項の改定は、GFSIベンチマーク要求事項2020年版の発行に伴うもので、FSSC22000以外のGFSI承認規格はすでにバージョンアップしています。以下の表は2.5.6日本語版のアレルゲンの管理要求です。
アレルゲン管理計画書について教えてください。
組織は、次のものを含む、アレルゲン管理計画書を備えていなければならない:これまでに管理計画書があったとしても、Ver6のあらたな要求を含めて管理計画書を更新しなくてはなりません。文書化要求ですので文書を作成し保持せねばなりません。
アレルゲンの管理における要求事項a), b)について教えてください。
a) 原料および最終製品を含む、現場で取り扱うすべてのアレルゲンのリスト;
アレルゲンのリストは、現場に備え付けられていると思いますが、新規製品が追加になったり、原材料が変更になっていないか、この機会に見直してみるとよいでしょう。また、アレルゲンをリストによって特定したら、併せて製品の表示も見直してみるとよいです。製品回収の対象の多くはアレルゲンの表示ミスだからです。
b) アレルゲンの交差汚染のすべての潜在的な源泉を網羅したリスク評価;
製品ごとのアレルゲンについて、HACCPの危害分析表と同様に「起こりやすさ」と「重篤度」を評価したリスク評価表を作成しましょう。その際には自社工程だけではなく、原料の製造工程も含めて評価しましょう。たとえばお蕎麦の原料として使う、中国産のそばは、たとえ袋に詰められていても、バルクでの保管・運送工程が小麦と一緒になるので潜在的に小麦のアレルゲン汚染の恐れがあります
アレルゲンの管理における要求事項c), d), e)について教えてください。
c) リスク評価の結果に基づき、交差汚染のリスクを低減または除去するための管理措置の特定と実施;および
手順書などに、交差汚染しないための管理方法を具体的にわかりやすく記述します。
原料・製品の破袋やこぼれなど想定外の事象が発生した際のアレルゲン管理手順が不明確になっている工場が散見されます。これらも含めて作成するとよいでしょう。
また、現場職員へ手順書の管理方法の教育と実際の所作の確認も行ってください。
d) これらの管理手段の妥当性確認と検証が導入され、文書化された情報として維持されなければならない。アレルゲンプロファイルが異なる複数の製品が同じ製造区域で製造される場合、検証検査はリスクに基づいた頻度で実施されるものとする。例えば、表面検査、空気のサンプリングおよび/または製品検査
管理方法が想定した基準に達したら、現場または、模擬空間で管理方法の妥当性確認を行います。妥当性確認とは策定した管理方法でアレルゲンが管理できているのか?交差汚染は防げているか?担当する従業員は管理する理由を理解しているかなどです。
妥当性確認と検証が一緒になっている組織がありますが、検証は試験による管理方法の確認をさします。アレルゲンの管理での検証は、ふき取りによるアレルゲン検査や、製品のアレルゲンの検査などを指します。検証は一定の頻度で実施します、検証の頻度は先ほどのリスクに応じて設定するとよいでしょう。
検証結果によっては、管理方法の改定を行います。検証結果に問題がなかった場合でも定めた頻度で実施してください。
e) 予防ラベルまたは警告ラベルは、必要な管理措置がすべて効果的に実施されている場合でも、リスク評価の結果により、アレルゲンの交差汚染が消費者に対するリスクであると特定された場合にのみ使用されなければならない。警告ラベルを張り付ても、組織は必要なアレルゲン管理措置の実施や検証試験の実施を組織が免除されるものではない;
MS(マネジメントシステム)では、基準による要求よりも、法律による要求が優先されますので、注意喚起表示(予防または警告ラベル)についても、日本国内向け製品の表示は日本の食品表示基準に従ってください。
また、製品に表示をしたからと言って、FSSC22000では追加要求事項のアレルゲンの管理は免除されません。
アレルゲンの管理における要求事項 f), g)について教えてください。
f) すべての要員は、アレルゲンの認識に関する研修と、各自の作業領域に関連するアレルゲン管理対策に関する特別な研修を受けなければならない;
ここでは、従業員に対するアレルゲンに関するトレーニングの要求をしています。基礎的なアレルゲンの講習に加え、工場特有の管理対策も求めています。基礎教育に加えて、先ほど作成した管理方法を教育するとよいでしょう。
すべての要員となっていますので、新たに採用した職員についても抜けもれなく実施してください。教育結果は、教育した内容とともに力量表などに記載して保管します。森永生科学研究所さんでも、アレルゲン教育のお手伝いを行っていると聞いています。お問い合わせください。
g) アレルゲン管理計画は、少なくとも年に1回見直すとともに、食品安全に影響を与える重大な変更後、アレルゲンに起因する公的リコールまたは組織による製品の回収後、あるいは業界における傾向がアレルゲンに関連する類似製品の汚染を示す場合に見直されなければならない。この見直しには、既存の管理措置の有効性と追加措置の必要性の評価を含めなければならない。検証データは傾向分析を行い、見直しのためのレビューへの情報として使用されなければならない;
Ver.6では管理計画の見直し頻度は、最低でも一年に一回と定められています。MSでの見直しとは、改定しなくとも見直しの「行為」を求めていますので、見直ししたら管理計画に見直しした日時を記入して更新するとよいでしょう。
また、製品開発・改定・工場での拡大製造のレビューにアレルゲンの項目を追加して、重大な変更がなくとも、新製品開発や製品改定などの都度、アレルゲン管理の見直しをする必要がないか検討するとよいでしょう。
さらに、公的リコールの際にも計画を見直しするように求めています。厚生労働省の食品衛生申請等システムのHPを定期的に確認し、他組織のリコール情報を検索して、見直しの必要がないか確認することを仕組化するとよいでしょう。
レビューの要求がありますので、検証結果は傾向分析を行いマネジメントレビューへのインプットに加えておくといいでしょう
東畑:本日はお話しいただきありがとうございました。
長谷川様:FSSC22000を導入していない組織でも、同様の仕組みを構築・運用することで、アレルゲンに関する事故を防ぐ助けになると思います。ぜひチャレンジしてみてください。
(文責:㈱森永生科学 東畑有希)
HPなど
- FSSC22000追加要求事項 ダウンロード HP (日本語版もあり):https://www.fssc.com/schemes/fssc-22000/documents/fssc-22000-version-6/#additional-documents
- GFSIベンチマーキング要求事項の説明:https://mygfsi.com/wp-content/uploads/2020/03/20200321-GFSI-One-pager-%E3%83%98%E3%82%99%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%99%E8%A6%81%E6%B1%82%E4%BA%8B%E9%A0%85v2020.pdf
- 厚生労働省食品衛生申請等システムHP:https://ifas.mhlw.go.jp/faspub/_link.do
インタビュイーご紹介
長谷川 清(はせがわきよし)
DNV GLビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社
食品・飲料部
1963年生まれ。埼玉県出身、日本大学農獣医学部(現生物資源科学部)農芸化学科(現生命化学科)卒。MBA取得。専門は微生物学・醗酵工学(二次代謝産物の利用)
日清製油株式会社(現日清オイリオ)、日清製粉株式会社で研究開発を担当。その後、品管・品質保証業務を歴任。
2014年よりDNV GLビジネス・アシュアランス・ジャパンにて、食品業界での開発及び品質保証の経験を生かして新サービスの開発に力をいれている。
DNV GLビジネス・アシュアランス・ジャパン