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食品製造業におけるHACCP入門 ~ 簡単に解説!! ~

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食品製造業におけるHACCP入門 ~ 簡単に解説!! ~
食品企業の実情に明るい経営コンサルタントとして活躍されている永富靖章様に、「食品製造業におけるHACCP」について、初心者向けに解説いただきました。

目次

はじめに

食の安全を確保するためには、様々な手法があります。中でも、HACCP(ハサップ)は、国際的な食品衛生管理の手法で、日本では2020年に義務化されました。また、世界各国でも食品衛生管理の手法として広く取り入れられています。

食品製造業におけるHACCPのプロセスでは、製造工程中に発生する可能性のある、健康への危害要因を特定します。さらに、重要な管理ポイントを明確にし、これらのポイントを継続的に監視することにより、製品の安全性を確保します。HACCPでは「ハザード分析(HA)」と「重要な管理ポイント(CCP)」をきちんと理解することが重要です。この記事では、HACCPの概要について分かりやすく解説します。

HACCPで食の安全を守る

製品の安全性を確保することは、食品事業者にとって最も重要な課題の1つと言えるでしょう。食品の製造過程で食品衛生上の問題が発生し、健康被害を消費者に与えてしまうと、食品事業者にとって、事業の存続にかかわります。また、信用の低下やブランドイメージの毀損につながる可能性もあります。

では、自社製品の安全性をどのように確保していくべきでしょうか。そのポイントは「製造工程の管理」という点です。食の安全を優先事項として製造工程の設計を行い、問題発生時の迅速な対応策や、作業環境の維持に至るまで、製造プロセスに関わる活動を包括します。これがHACCPの基本的な考え方につながります。

また、HACCPが実際に効果的に機能しているかを確認する上で、検査の役割も重要になっています。従来からの抜き取り検査に加えて、HACCPの手法を取り入れることによって、より安全な食品製造が実現できます。

HACCPとは

次にHACCPの概要を簡単に説明します。
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HACCPは、その名が示すように、ハザード分析(HA)と重要な管理ポイント(CCP)の組み合わせから成り立っています。ここで、HAとはHazard Analysis(ハザード分析)、すなわち危害要因を分析することを意味し、CCPとはCritical Control Point(重要な管理ポイント)、つまり食の安全を確保するために重要な管理ポイントを指します。

HACCPの要点は、次の①~⑤のような5つのステップにまとめることができます。

  • ハザード分析(HA)する。
  • 重要な管理ポイント(CCP)を特定する
  • 重要な管理ポイント(CCP)の管理方法を設定する
  • 管理方法の妥当性を確認する
  • 文書・記録を作成する

この①~⑤のステップについて詳しく見てみましょう。

5つのステップでHACCPの要点を理解

➀ハザード分析(HA)する

ハザードとは、食品製造過程において人の健康に有害な影響を及ぼす可能性のある物質のことです。

ハザード分析では、製造に関わる原材料、作業環境、製造工程などの中に、どのようなハザードがあるのか、どこでハザードが生まれるのか、なくなるのか、増えるのか、減るのか、といったことに関する情報を集めます。

一般的には生物的ハザード(リステリア菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌など)、化学的ハザード(ヒスタミン、食物アレルゲン、残留農薬、洗浄剤など)、物理的ハザード(プラスチック片、金属片、ガラス片、石など)に分けて挙げていきます。社内でHACCPチームを編成し、ブレインストーミングを通じてハザードを洗い出していくことは1つの方法です。

その後、特定されたハザードに対する管理方法を検討します。現場でのハザード対策が効果的に実行されているかを確認することが重要です。

➁重要な管理ポイント(CCP)を特定する

ハザード分析を通じて、重要な管理ポイント(CCP)を検討します。CCPについては、妥当な管理基準を定めて、その管理基準を達成しているかどうかを、機器や装置を用いて常時監視するなどの対応が必要です。

➂重要な管理ポイント(CCP)の管理方法を設定する

CCPの管理方法の設定には以下が含まれます。

a) 管理基準の設定
管理基準は、英語ではCritical Limits(クリティカルリミッツ)と呼び、必ず達成しなければならない基準を意味します。例えば、飲料の加熱殺菌工程をCCP として、65℃30 分間という管理基準を設定することが挙げられます。
b) モニタリング方法の設定
管理基準が守られているかを確認する監視方法を定めます。これには、監視を行う人、監視のタイミング、監視の方法などが含まれ、それらを明確にします。
c)管理基準を逸脱した際の措置を設定
管理基準からの逸脱は、製品の安全性に問題がある可能性を示します。そのため、逸脱が発生した際には製品を隔離するなどの措置が必要です。また、逸脱の根本原因を究明し、再発防止措置を講じることが求められます。

➃管理方法の妥当性を確認する

①~③により設定された管理方法に対して、その妥当性を確認します。

以下のポイントを確認し、必要に応じて管理方法を見直します。
・管理基準が科学的根拠に基づいて妥当か。
・原材料や製造工程の変更があった場合、それに伴うハザードの変化がないか。
CCPで管理しているハザードが、効果的に低減または除去されているか。
・見逃しているハザードや過小評価しているハザードがないか。
・設定した管理方法が現場で正しく実施されているか。

⑤文書・記録を作成する

文書および記録を作成する目的は二つあります。第一に、HACCPの効果的な運用を支援すること、そして第二に、取引先・監査員など第三者に対して、HACCPを効果的に運用していることを証明することです。

文書および記録の様式については、はじめはインターネットなどで入手可能なテンプレートを使用しても構いませんが、慣れてきたら、より自社に適した様式へと更新していきましょう。自社に合わない様式を継続して使用することは、結果としてその文書や記録が形骸化する原因ともなりかねません。

おわりに

以上、食品製造業におけるHACCPについて簡単に解説してきました。食品におけるハザードは多種多様で、それぞれの食品の特性に応じた管理方法も様々です。自社に合った管理方法を構築しましょう。

また最近は、各種ハザードの中でも「食物アレルゲン」についての管理が非常に重視されるようになってきています。次回は、そのあたりについてご説明いたします。


著者ご紹介

永富 靖章(ながとみ やすあき)
経営コンサルタント


飲料メーカーで商品開発や品質管理業務に従事したのち、株式会社ファスマックに入社。統括部長として、主に食物アレルギーや遺伝子組換え食品の受託検査、研究用試薬の販売などを担当。
また、株式会社アジア食品安全研究センター 取締役、青島誠誉食品検測有限公司 副董事長を歴任。

2023年よりフリーランスとして独立し、経営コンサルティング事業を開始。
中央大学大学院応用化学専攻修士課程修了、早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA)



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